手ぶら登園保育コラム

保育園の運営に役立つ情報を発信

「長い休み明け、何に気をつけたらいい?」——小崎恭弘先生の“こんなとき保育でどうする”

「長い休み明け、何に気をつけたらいい?」——小崎恭弘先生の“こんなとき保育でどうする”

「こんなとき、子どもにどう接したらいいのかな…」

保育をしていくなかで、繰り返し目にするシチュエーションに戸惑ったり、とっさに子どもたちに言葉がかけられなかったりして、「これって大丈夫かな」「何て言えば良かったのかな」と悩まれる方は、少なくないでしょう。

この連載では、大阪教育大学・教育学部准教授の小崎恭弘先生に、現場で働く保育士からの、いろんな質問にお答えいただきます。

第4回のお悩みは、「長い休みが明けてから、保育がなかなか落ち着きません。どんなことに気をつければいいでしょうか?」というもの。保育者として、どのような関わり方をすればいいのでしょうか。

【第3回はこちら】
「失敗がこわくて逃げちゃうときは?」——小崎恭弘先生の“こんなとき保育でどうする”

子どもたちと「長期休み」

コロナ禍の影響で、保育施設においても様々な通達や判断のもと、「部分登園」や「休園」などの対応がなされました。地域の状況によってこれらの取り組みの内容も大きく異なり、それぞれの現場で先生方一人ひとりが、本当にご苦労をされたことだと思います。

ここに至るまでの、医療従事者の方々のご苦労やその献身的な取り組みには、心から敬意を払います。

と同時に、各園での先生方の取り組みや保育への姿勢についても、深い敬意をお伝えしたいと思います。本当にありがとうございました。

自粛要請の期間、多くの子どもたちは家庭の中で過ごしていました。これほど長く子どもたちの登園しない期間があったのは、おそらく日本の歴史上初めてのことです。登園が再開された直後、ご質問のように「子どもたちがなかなか落ち着かなくて、どう接すればいいか困った……」という経験をした保育者も、多いのではないでしょうか。

もちろん今回のことに限らず、子どもたちが長く登園しない期間は、定期的に訪れるものです。年末年始のお休みも、暦や保護者の会社のご都合で長期になったり、家庭の事情で休暇を取られたりする場合もありますよね。

そうすると、その休み明けには、やはり少し気をつけるべきことがあります。今日はそのような視点でお答えさせていただければと思います。

ポイントは以下の3点です。

① 変化のタイミングを意識しよう
② 「最初」を大切にしよう
③ 「ゆっくり」始めよう

それぞれ、順にお話していきます。

① 変化のタイミングを意識しよう

保育をしていて、月曜日の朝になんとなくクラスが落ち着かない、あるいは落ち着きにくい子どもがいる、と感じたことはありませんか?これは、土日の生活の変化が、子どもたちの気持ちや体に影響を与えているのです。

もしかすると子どもたちは、家では保育の場とは違い、自分の思い通りの生活をして、時にはわがままを言っていたかもしれません。保護者との関係性の中の営みだけで、自由度も高いです。そして家庭というものは、それで良いのだと思います。

しかし保育施設は、いくら少人数であったとしても、やはり集団生活の場です。家の自由さとは異なりますし、施設内のルールややり方があります。

例えば、「時間」は分かりやすいですね。全員が好きなときに寝て、好きなときに起きるなどは、保育においてはなかなかに難しいことです。

変化のタイミングを意識しよう

家庭から集団へ、子どもにとっての生活変化のタイミングでは、保育者は子どもたちの様子に、十分目を配る必要があります。

先ほどの「時間」だけでなく、子どもの気持ちや体の動きなども、大きく変化している場合があります。そこには、“良い変化”もあれば、“あまり良くない変化”もある。まずは子どもたちの状態を、しっかり見極めましょう。

② 「最初」を大切にしよう

その変化のタイミングの中でも、やはり休み明けの「最初」を特に意識してほしいと思います。

「最初」は、1日の中にもいろいろあります。園に入るタイミングや、久しぶりに担任に会う瞬間、自分の部屋に移動するときや、お友達に久しぶりに会うときなども考えられます。

これは、自分に置き換えて考えれば分かりやすいですね。久しぶりに会う友達、訪れる場所、する経験は、初めはなんだかギクシャクしたり、少し戸惑ったり、感覚を取り戻すまでに時間がかかったりします。子どもたちも同じですし、大人よりデリケートな部分が多くあるので、そこへの配慮は大切です。

もしかすると、保育者は毎日仕事をしていたり、お休みのない子どもたちと接していたりしてあまり変化を感じておらず、休んでいた子どもへ配慮が必要なことに、気づきにくい場合があるかもしれません。その際、つい「毎日いること」を前提としてしまいがちなので、意識して心がけましょう。

③ 「ゆっくり」始めよう

では、子どもたちの「最初」にはどのように関わればいいでしょうか?3つ目のポイントは「ゆっくり」です。

日々の保育では、できるだけ一人ひとりのペースを大切にしてあげてほしいところですが、長い休み明けの場合は、意識的にゆったりとした丁寧な保育を行いましょう。

「ゆっくり」始めよう

子どもたちの中には、何にでもハイペースな「気持ちが急くタイプ」もいます。そうした子どもの場合、気持ちに体がついていかないことがよくありますので、特に注意してあげてください。

家庭でうまく気持ちの発散ができていなかったり、十分に体を動かしていなかったりすると、久しぶりに施設へ来たとき、嬉しくてちょっとテンションが上がり過ぎてしまうことがあります。気持ちを抑えきれなかったり、お友達との微妙な感覚の差にうまく合わせられなかったりすると、時にはそれがケガや事故、お友達との大きなトラブルになることもあるかもしれません。

あえて「ゆっくり」と活動を行い、子どもたちの心と体のペースが整うように心がけてほしいと思います。「日常」に合わせていくには、保育者もそれなりの時間が必要ですから。

示された“インフラ”としての重要性について

5月の下旬に緊急事態宣言が解除され、多くの子どもたちが「長い休み」を経て、園に通う「日常」へと移行し始めていることと思います。

多数の学校や機関、施設が閉めざるを得なかった中で、保育施設を完全に閉鎖できなかったことは、それだけ保育という営みが「この社会全体にとって、絶対に必要なものであった」からです。単に子どもを預かるだけの施設ではなく、ガスや電気、水道と同じように、この社会を支える重要な“インフラ”であることの証明でした。

もちろん、リスクも伴います。だからこそ、不安な状況の中でも安全と衛生に配慮しながら、先生方が子どもたちを守り、適切な保育を続けられたことに心から感謝いたします。また、保育に関わるものとして、とても誇りに思います。

まだまだ終わりではありませんが、この経験をより強固なものとして、今後もみなさんと一緒に、保育の価値をさらに高めていければと考えています。

小崎恭弘
大阪教育大学教育学部准教授。1968年兵庫県生まれ。兵庫県西宮市公立保育所で初の男性保育士として12年間、保育に携わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』をはじめ、テレビや新聞、雑誌など多方面で活躍中。年間通して全国で育児指南を披露する子育ての講演を行う。NPO法人ファザーリング・ジャパン顧問。『家族・働き方・社会を変える父親への子育て支援』『子どもの力を伸ばす!! じょうずな叱り方・ほめ方』など単著・共著多数。NECQA(保育士と保育の質に関する研究会)代表。

(編集:佐々木将史)

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