インタビュー「レッジョ・エミリア・アプローチ」の実践。子どもが“そのまま”に伸びていく環境を作りたい『こどもなーと保育園』(1/3)

「レッジョ・エミリア・アプローチ」の実践。子どもが“そのまま”に伸びていく環境を作りたい『こどもなーと保育園』(1/3)

イタリア北部の小さな町から始まった『レッジョ・エミリア・アプローチ』。

子ども一人ひとりが生まれ持つ「可能性」を尊重し、創造力や表現力を育む実践方法として、保育の世界でも少しずつ名前を聞くことが増えてきました。しかし、実際の活動現場を目にしたことがある方は、まだまだ少ないのではないでしょうか。

今回取材に訪れたのは、そのアプローチをヒントに活動を広げ、子どもも大人も毎日を心から楽しんでいるという『こどもなーと保育園』(大阪府)。

何を大切に子どもたちに寄り添っているのか。子どもは、そして大人は、どう成長していくのか。全3回に分けて、その魅力を探ってみました。

レッジョ・エミリア・アプローチとは

『レッジョ・エミリア・アプローチ』は、レッジョ・エミリア(Reggio Emilia)市発祥の、幼児教育の実践法です。

子どもたちが長期間、主体的に1つのテーマを掘り下げる「プロジェクト」の活動や、その経過を文字や写真・映像で記録する「ドキュメンテーション」、子どもの創造力を育む空間設計などが大きな特徴で、特に1990年代以降は、幼児教育の国際的なロールモデルの1つとして注目されてきました。

日本でも、2001年に『子どもたちの100の言葉展』がワタリウム美術館で開催され、同年に『子どもたちの100の言葉』(学習研究社)が出版。以後、少しずつ研究が重ねられ、その手法を導入する園も増えてきています。

レッジョ・エミリア・アプローチとは『子どもたちの100の言葉展』(2001年)公式サイトより

こどもなーと保育園は、日本での実践を進める保育園の1つ。その名前には、「こども」「モノ」「アート」園にとって大切な、3つの意味が込められています。

代表の和泉誠先生は、ご自身のお子さんが「好きにラクガキできる」ためのアトリエづくりをきっかけに、地域の子どもたちが集まる美術教室を開始。待機児童問題などを解消するために保育ママ(家庭的保育者)の認定を受けた後、2015年4月から小規模保育所として、こどもなーとをスタートされています。

現在5つの小規模保育所と、2つの家庭的保育室を運営される中から、今回は『こどもなーと正雀保育園』を訪ねてお話を聞きました。

「100の言葉」で、レッジョ・アプローチと出会う

まず最初に、レッジョ・エミリア・アプローチ(以下、レッジョ・アプローチ)を保育に取り入れようと考えたきっかけを教えていただけますか?

和泉もともと子どもたちに向けた美術教室をしていた頃から、「アートを通じてどう子どもに関わったらいいか」と考えていました。

そのときにレッジョ・アプローチを知って、すごくいいなぁと思って。保育に取り入れるというよりは、「こういう活動なら自分にできるんじゃないか」と考えていた延長線上に、保育の事業があったという感じですね。

「100の言葉」で、レッジョ・アプローチと出会う『こどもなーと保育園』代表の和泉誠先生

レッジョ・アプローチに惹かれた理由って、どこにあったんでしょうか?

和泉今の保育や幼児教育の現場を見ていると、何かを表現するとき、子どもに「こうしなさい」「こうやって作りましょう」って伝える場面が多くありますよね。ただ、それは技術的な手作業のやり方を教えているだけで、子どもの創造力を育てることとは違うものだと思うんです。そこに僕はモヤモヤしていて。

でも、『子どもたちの100の言葉』を一番最初に読んだとき、自分が子どもたちについて感じていたものと、とても近いことが書いてあると思いました。

子どもには
百とおりある。
子どもには
百のことば
百の手
百の考え
百の考え方
遊び方や話し方
百いつでも百の
聞き方
驚き方、愛し方
歌ったり、理解するのに
百の喜び
発見するのに
百の世界
発明するのに
百の世界
夢見るのに
百の世界がある。
子どもには 百のことばがある
(それからもっともっともっと)

『子どもたちの100の言葉 : レッジョ・エミリアの幼児教育実践記録』(2001年)より

和泉レッジョ・アプローチでは、アートをすることが中心じゃなくて、あくまで「子どもと関わる手法」としてアートを取り入れてるのがすごく良いなと思います。

アートって、そもそも正解のない世界じゃないですか。「それはダメだ、こうやりなさい」って指示する必要はない。子どもたちを“そのまま”に認めてあげればいいんです。この上に保育も成り立ってますよっていうところが、大きな魅力だと思いますね。

とはいえ、10年近く前の日本では、レッジョの存在はまだまだ知られてなかった気がします。

和泉当時はそのアプローチを掲げていた園も数えるほどしかなかったし、文献も少ししかありませんでした。色んな大学の先生にも相談したんですが、「日本の幼児教育で実践するのは難しいと思う」なんて言われて。まあ、難しいと言われると余計にやりたくなるんですけどね(笑)。

「100の言葉」で、レッジョ・アプローチと出会う

和泉といっても、向こうで使っている材料をただ取り寄せたり、同じ空間を作ったりするだけではダメなんです。環境の特性をちゃんと理解して関われる大人がいないと、子どもたちはそこで遊びませんから。

なので、子どもの反応を見ながら、手探りで実践していきました。最初は保育ママ制度で5人の施設から始めて、10人、19人(小規模の定員)と増えていって。

レッジョ・アプローチをやってきたというよりは、そこから受けたインスピレーションを大事にして、先生たちと一緒に『こどもなーと』という文化を作り上げてきたと思っています。

こどもなーとは、どんな保育園?

こどもなーとでは、子どもたちはどんなふうに過ごすんですか?

和泉プログラムは特に決まっていません。園によって多少違いはありますが、基本的にいくつかの選択肢を用意しながら、毎日子どもたちに聞いて、子ども自身がやりたいことをやります。部屋で何をするか、外ならどこに行くのか。

子どもたちの興味関心に合わせて環境をつくったり、提案をしていったりすることが一番大事ですね。そこから一人ひとりが「自分で選ぶ」ことで、主体的に活動に関わることができます。

こどもなーとは、どんな保育園? こどもなーとは、どんな保育園? こどもなーとは、どんな保育園? こどもなーとは、どんな保育園? 実際の活動の様子(提供:こどもなーと保育園)

子どもたちが積極的に、色んなことに参加できるようになっているんですね。

和泉保育者の主体性も、こどもなーとでは非常に大切です。これが一番の特徴かもしれません。

なぜなら、子どもの主体性を大事にしようと思ったら、保育者が考えなきゃいけない場面がすごく多いんですよ。決められたマニュアル通りにやっていくだけでは、その流れから子どもたちが外れたとき、「そうじゃない」って制約することが増えてしまいます。

現場の先生が、その度に判断をされてるんですか?

和泉そうです。子どもたちと「今日こういう活動をしよう」ってなったとき、実際にどうやるのか、今この子たちにとってどんな意味があるのか、どういう配慮が必要なのかは、やっぱりその場にいる先生が一番よくわかっているはずですから。

そこを、僕や施設長が言うのではなくて、関わっている先生たちから意見を吸い上げて、みんなでどう上手くできるかを考えていく。なので、各園の雰囲気も自然と違ってきます。

こどもなーとは、どんな保育園?

主体的に園を作っていくと、それぞれのカラーが出てくるんですね。

和泉子どもの家庭環境も違えば、園が置かれている地域の状況も違います。やっぱり小規模は園庭がないので、外に出る機会が多いんです。その地域の中でどう関わっていくのかは、すごく重要ですね。

それに、1年の中でも子どもたちは成長していくので、園も常に変化していく必要がある。決まったやり方を、例えば「何月はこれ」とやっていっても、子ども自身が違うので通用しないと思うんです。

どの園にも共通して言えるのは、みんなが本当にいつも楽しそうにしてることかな。子どもたちはもちろんですが、保育者を見ても「やらされて仕事をしてる」ような感じは全然ないなって思いますよ。

こどもなーとは、どんな保育園?

次回は、こどもなーとで働く保育士の方も交えて、園での子どもへの寄り添い方などをお聞きしていきます

(取材・執筆/佐々木将史)

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2020年1月27日
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