インタビュー“目の前のこと”から始める、感性の育み。子どもの見方が変われば「おもしろい」社会になっていく『こどもなーと保育園』(3/3)

“目の前のこと”から始める、感性の育み。子どもの見方が変われば「おもしろい」社会になっていく『こどもなーと保育園』(3/3)

イタリアの『レッジョ・エミリア・アプローチ』を取り入れ、子どもの創造力や表現力を育む『こどもなーと保育園』を訪れての取材。

前回までの記事では、代表の和泉誠先生とアトリエリスタの小原奈津先生に、こどもなーとの活動の魅力や、保育者の変化をお聞きしてきました。

「レッジョ・エミリア・アプローチ」の実践。子どもが“そのまま”に伸びていく環境を作りたい——『こどもなーと保育園』(1/3)

“日常のなか”で活動をつなぐ。子どもの「気づき」を広げる保育者の寄り添い方——『こどもなーと保育園』(2/3)

最終回では“元保護者”の石田結香里先生も交え、こどもなーとを通じて「保護者がどう変化していったか」、さらに「一人ひとりの子どもの可能性が、どうすればより広がる環境を作っていけるか」を探っていきます。

全3回に及ぶインタビューからは、日々の保育のヒントになりそうなものがいくつも見えてきました。

保護者自身の「子どもの見方」が変わる

活動を通じて、保護者側の変化を感じることはありますか?

和泉保育士と一緒で、保護者も変わりますね。子どもの見方が変わることで、「これでいいんだ」って思えるようになっていく。

例えば、つい怒ってしまうようなことを子どもが家でしても、「もしかしたらこの子は今ここで、何か新しいことを考えてるんじゃないか」と思えると、怒る前に一旦考えることができます。そこに気づいて、怒らず声をかけた結果、別の活動につながることも出てくる。

何か子どもが感じたり、発見したりすることに気づくようになるのかなと思います。これについては、実際に石田がこどもなーとの元保護者なので…。

保護者自身の「子どもの見方」が変わるこどもなーと保育園・本部職員の石田結香里先生

石田今はこどもなーとで事務と保育補助、それに保育園と地域をつなぐコミュニティ・コーディネーターをしていますが、元々は保護者でした。一番下の息子が、1歳のときから2年間通って、すごく良い経験だったなぁと思います。

どんなところが良かったんですか?

石田毎回どろどろの絵の具まみれで帰って来るんですけど(笑)、やっぱり「遊び切らせてくれた」満足感が、息子の姿から本当に伝わってきました。それを見て私も、ダメダメって言い過ぎるのは良くないなって学びましたね。

それまでは結構「ダメ」って言うことも?

石田「危ないからダメ」「書いちゃダメ」とか。家だとペンを持ってきて壁に書くこともあったんですけど、園でとことん遊び切らせてくれるようになると、自然と「家の壁はあかんのやな」って気づいて、やらなくなりましたね。

外で満足するまでやれた結果、すごく成長してくれたなぁと思います。

和泉そういえば、彼女がまだ保護者だったときに「あっ」って思った瞬間があるんですよ。

夕方に子どもたちが木炭で遊んでいて、結構汚れたんです。先生たちも、保護者が来るまでに洗ってあげようと思ってたんですが、その前にお迎えに来ちゃって。息子さんは口の周りが、どろぼうさんみたいに真っ黒だった(笑)。

保護者自身の「子どもの見方」が変わるそのときの石田先生の息子さん(提供:こどもなーと保育園)

和泉「ちょっと今こんな状況なんですけど、洗いますから」って言ったんです。すると、「そのままでいいですよ」と、その顔をおもしろがってくれて、写真を撮り始めて(笑)。その子も気に入ったから「このまま帰りたい」って…覚えてます?

石田覚えてます。息子、「お風呂入らない」なんて言ってましたからね(笑)。

和泉保護者の中には、帰る際はやっぱりきれいにしてほしい方もいて、できるだけ洗っていたんですけど。そのときはもう全然間に合わなかったんですね。

でも、彼女がそれをおもしろがってくれるのを見た時に、すごくいいなって。子どもたち自身も、「自分たちのやってることを受け入れてもらってる」と感じられますし。

保護者自身の「子どもの見方」が変わる

保護者に受け入れてもらえると、園でできる活動の幅も増えますね。

和泉そう。そのためには、園での活動の良さと、子どもたちがやる中で「何がどう大事か」の意味を、しっかり伝えていかないと。

要は「みんなで子どもたちを取り巻く環境を作る」ってことなんですが、保育者と保護者が一緒になって、子どもの理解を深めていくことが大事だなと思ったんです。

目の前の子どもを見て、経験を豊かにさせる寄り添いを

今、「とことん遊び切らせる」という話がありましたが、生活習慣のところでは、例えば給食や午睡の時間は決まっているんですか?

和泉ごはんの時間なら、一応みんなでごはんを食べます。だいたいの子どもは、「ごはんの用意するよ」って声をかけると片付けに行きますしね。

けれど、どうしても活動によっては「もうちょっとこれやりたい」という子もいるので、その場合は続けてもらいます。どこか自分の中でケリがついたら、あわてて手を洗って、食べに来ますよ。

あとはやっぱり、みんなで一緒にやるのが苦手な子もいる。本当はすごくやりたいけど、大勢でいる間はなかなか入れなくて、いなくなってからやり出す子もいますね。

目の前の子どもを見て、経験を豊かにさせる寄り添いを

そういったときの寄り添い方って、その子を見て、時々で対応や言葉がけを考えるんですか?

和泉ですね。だから難しい。決まったことをやる方が、だいぶ楽だと思います。

でも、例えばイスに座るにしても、別に大きい声を出して「みんな座りなさい、ピシ!」とやらなくても、やりたいことがそこにあれば子どもたちは自発的に行くんですね。

それって理想論に聞こえますけど、まずは大人の都合で強制せずに、子どもたちに寄り沿っていくのが大事で。そう考えるとやっぱり、子どもの姿をしっかり見ていく必要があるんです。

小規模も大きい園も変わらない。“目の前”をいかに感じるか

そういった細やかな寄り添いは、小規模だからできる部分もあるんでしょうか?

和泉「小規模だからできる良さ」は、実際あると思います。この時期って、新しく出会うことが本当にたくさんあるじゃないですか。初めて触るとか、初めて見るとか。

その0〜2歳のときに、より豊かな経験をさせるのってすごく大切なんです。

しっかりした土壌をちゃんと作っておけば、3〜5歳、小学生、中学生になってから、その子らが伸びる素地になる。基本的にクリエイティブなものって、無から何かを生み出すんじゃなく、「今までの経験や知識を紡いで、新しい何かに作り変える」ものだと思うので。

小規模も大きい園も変わらない。“目の前”をいかに感じるか

和泉一方で、こどもなーとの考え方や取り組み方って、別に人数だけの問題ではないと思っています。規模の大きい施設でも、基本は変わりません。

なので本当は、3・4・5歳児も対象にした施設もやりたいですね。ほとんどの保護者から、3歳以上も見てほしいという声もあるので。

環境づくりも、どうしても小規模の制限はある気がします。

和泉こういうふうに空間を作りたいと思っても、制約上できない現実は実際あります。ただ、そこについても結局、「恵まれた環境を子どもたちに与えること」だけが重要じゃない、と思ってるんですよ。

例えば『森のようちえん』みたいな、自然豊かなところで育つのはすごくいいことですが、「じゃあこの都市部で、子どもは自然と関われないのか」といったらそれも違う。一歩外に出れば草も生えてるし、木もあるし葉っぱも落ちてます。

大事なのは結局、自分たちの置かれた環境の中で、“目の前のもの”を感じること。その上で「子どもたちに何を提供できるか」って考えるのが必要なことかなと思いますね。

「新しく来る先生」からこそ、学べることがある

こどもなーとを卒園した、感性豊かな子どもたちがたくさん増えていけばいいなと思います。

和泉その子が本来持っている良さを生かして、伸ばしてあげられる環境があれば、おもしろいことをできる子どもたちがどんどん出てきます。そうすれば、ちょっとずつ社会が変わるかもしれない。それだけの可能性があると思うんです。

指針も改定されましたし、保育の世界も、だんだん変わってきているように感じますが。

和泉すごく印象的だったことがあって。うちの職員が新しい保育指針を見て、「これってうちがやってることじゃないですか」って言ったんですよ。

僕らのやってきたことって、実はそれまで結構批判されてたんですね。「0・1・2歳でこんなことをやって何になるんだ」「意味があるのか」って。

「新しく来る先生」からこそ、学べることがある

和泉それが今は、色んな先生や大学の研究者も見に来ていただくようになりました。レッジョ・アプローチを取り入れている園も増えてきましたし、この1〜2年で、かなり風向きが変わってきたなと思います。

アトリエリスタの小原さんは、新卒からこの園ですよね?周りの方と話していて、何か感じることはありますか?

小原私自身は、ここでやりたかった保育ができているので、毎日すごく楽しいです。

ただ、卒業した大学の先輩や友達の中には、「学んできたことと違うな」ってモヤモヤを抱えてる保育士も、やっぱりいますね。

和泉新卒の先生って、実は“一番新しい理念”を学んでるはずなんですよ。だから、その人たちの知識が生かされる現場じゃないと、保育って変わっていかないと思うんです。

「新しく来る先生」からこそ、学べることがある

和泉例えば、今だと色んな国籍の子が増えてきていますが、20年前はそういう環境じゃなかった。保護者の対応はどうするかっていうのを、ベテランの先生は学んできてないわけです。

そこはやっぱり、新しい先生たちの方が柔軟に対応できる。逆に、現場の経験値が不足している部分を、ベテランの先生が補えばいいだけの話だと思ってます。

新しい先生の力こそが大事なんですね。

和泉今の社会で生きていく子どもたちを育てるんだから、今の社会環境に合わせる必要があると考えていて。

子どもたちを取り巻く環境も、子どもたち自身も年々変わっているから、保育者自身がアップデートしないといけない。そのときに、新卒で新しい情報や知識を持った人が入ってくれるって、園にとってすごいチャンスだと、僕は思いますね。

「子どもの気づきに寄り添う」という芯はブラさずに、新しいものをきちんと取り入れていく…こどもなーとさんの考え方がよくわかりました。

今日はどうも、ありがとうございました。

「新しく来る先生」からこそ、学べることがある

(取材・執筆/佐々木将史)

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2020年2月6日
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