手ぶら登園保育コラム

保育園の運営に役立つ情報を発信

だれもが「自分で考え、決められる」園を目指して。主体性を育む『ひかり保育園』(1/2)

「自分のことを、自分で決めるられる子どもになってほしい」

ありたい子どもの姿を思い浮かべるとき、保育所保育指針にもある「主体性」(または「自発性」など)を、一つのキーワードにする園は多いと思います。

一方で、「主体性」と言葉にしても、それが現れるかたちや環境はさまざま。どういう保育をすればいいのか、実際に現場で悩まれている方もたくさんいるのではないでしょうか。

今回取材に訪れたのは、子どもたちも、それを囲む保育者も“自分たちで考え、行動できる”環境づくりを目指す『ひかり保育園』(兵庫県西宮市)。同園で実践されている内容を、主任の髙橋あゆみ先生にお聞きしました。

子どもたちが“自分で決める”保育園

ひかり保育園の園舎に足を踏み入れると、まず最初に、ホール左手の「そよかぜ」と名前がついた大きな部屋が目に入ってきます。

中にあるのは、子どもたちが座るたくさんの席と、ごはんを並べるカウンター。園児全員がごはんを食べる、ランチルームです。

ランチルーム「そよかぜ」(提供写真)ランチルーム「そよかぜ」(提供写真)

この保育園には、決まった食事の時間はありません。みんなで一斉にごはんを食べるのではなく、子どもたちそれぞれが区切りのいいところまで遊んで、「食べたい」と思ったときに食べられるようになっています。

また、食事の量も、3歳児からは「自分がどのくらい食べられるか」を自分で考えてお皿に取るビュッフェ式。こうした形をとるようになった背景には、ひかり保育園の「主体性」を大事にする姿勢がありました。

髙橋「“自分のやりたいこと”を“自分で決められる”子どもに育ってほしいな、という思いがあって、色んな試行錯誤をしてきました。子どもたちがしたいことを、したいときにできる。そんな環境を、できるだけ作ってあげたいと思ってます」

『ひかり保育園』主任の髙橋あゆみ先生『ひかり保育園』主任の髙橋あゆみ先生

『異年齢保育』を取り入れた普段の活動も、ベースは自由選択。子どもたちは毎日、「中で遊びたい」「今日は外に行きたい」など、1日の活動内容を自分で決めていくそうです。

実際に3・4・5歳児が過ごす保育室をのぞくと、室内遊具から描画・造形材までさまざまなものが置かれ、子どもたちがいつでも手にできるようになっていました。

子どもたちが“自分で決める”保育園

部屋のなかの配置も、数ヶ月に一度は見直されて、どんどん変わっていくそうです。以前は年齢ごとに部屋を区切ったこともありましたが、子どもたちの様子を見て「活動を制限してしまうのかも」と感じ、今の形になっていきました。

髙橋「きちんと担任を分けて、年齢ごとに過ごしていた年度もあったんです。でもそうすると、子どもたちから『先生、何したらいいの?』『今遊んでいい?』みたいな声が出てきたんですね。

こちらが知らず識らずのうちに、『今○○するときでしょう』なんて、子どものやりたいことを止めてしまってたのかなと気づいて。今は年齢をまたいだグループをベースに、子どもたちから出てくる声をできるだけ保育士が受け止め、形にするよう意識しています。

やっぱり園としては、大人の指示を待つのではなく、自分のことは自分できちんと決められる子に育ってほしい。そこが根底にあるからこそ、小学校から先に進んでも色んなことに挑戦できるんじゃないかなと考えているんです」

「今日の子ども」を見ながら判断していく

そうした考えを軸にするひかり保育園では、保育者が現場で日々、子どもたちの姿を見ながら判断することも多いといいます。

髙橋「例えば、今日みたいな日(※ 月曜日に取材に伺いました)の保育だと、週末出かけていて疲れていたり、土日ずっと保護者と一緒に過ごしたあとで、いつもより不安に感じていたりする子どもたちもいます。

そんな様子を見ながら、発散できるようにお散歩を提案してみたり、お部屋でゆっくり過ごせる環境も用意してみたりして、その日の子どもたちが活動を決めやすいように進めていますね」

「今日の子ども」を見ながら判断していく

あらかじめ「今日はお散歩」などと決めない理由として、子どもたちの主体性を育むことに加え、髙橋先生は二つの点も指摘します。

一つは、子どもたちの発達段階に合わせた寄り添いです。

髙橋「4月生まれの3歳児さんも3月生まれの3歳児さんも、同じクラスにはなりますが、成長や発達は全く違います。お散歩で『どれぐらい歩けるか』も変わってくる。そんななかで、一人ひとりが今日行くかどうかを調子に合わせて選べて、子どもたちみんなが満足して過ごせるようにしたいなって思うんです」

「今日の子ども」を見ながら判断していく

もう一つは、保育士と子どもとの関係です。

働く職員としては、もしかしたら内容が決まっていた方が楽かもしれない。けれど髙橋先生は、逆に決められているからこそ「お互いつらくなっている」場合もあるかも、と指摘します。

髙橋「子どもたちのなかには、『今日はしんどいから、お散歩イヤ』って思う子も当然いますよね。『スケジュールだから』と言って気持ちが乗らない子どもを促していくのって、子どもにとっても保育士にとっても、本当に健全なことなのかな……と思っていて。

それよりは、直接関わっている職員が『今日の子どもたちはどうかな』と様子を見ながら、保育の内容を変えられる環境の方が、子どもと保育士の信頼関係にも、一番いいのかなって感じています」

保育士にも求められる「主体性」

一方で、子どもたちに寄り添いながら、日々のちょっとした行動をきっかけに、保育士が活動を広げることもたくさんあります。

例えば、秋の「どんぐりマーケット」。どんぐりを「1ぐり」「2ぐり」とお金に見立て、園のなかでお店やさんごっこをしたり、電車に乗ったりできるこのイベントは、子どもたちが実際にそうやって公園で遊んでいる姿を見て、保育士が「おもしろそう」と広げて生まれていったものだそうです。

保育士にも求められる「主体性」

さらに、保育士自身からも、自分の興味や得意なことを活かした提案をしていくことがあるといいます。

髙橋「アウトドアの好きな保育士がいて、お泊まり保育で『キャンプのテントを立てて寝てみない?』と提案をしたり。『ナイトハイク行こう!』って、夜のお散歩をカッコよく言って(笑)、公園にちょっとした宝物探しを仕掛けたりしたこともありますね。

学生時代にやっていたこととか、職員それぞれに得意な分野ってあるんです。そういうものだと、提案した本人にも思いがありますから、『やろう!』となったらみんなで真剣に応援しますし、子どもたちも楽しんでくれるのかなって思いますね」

保育士にも求められる「主体性」

子どもたちだけでなく、保育士の主体性も大切だと考えるひかり保育園。

「これやりたいね」といった提案をしやすいぶん、子どもの様子を察知したり、常に自分の興味・関心のアンテナを立てたり、保育士に求められることもたくさんあるようです。職員の方々は、どう考えながら働いているのでしょうか。

髙橋「うちは法人(社会福祉法人三光事業団)全体として、一人ひとりが『自分が施設長だったらどうするか』を考えて動きなさい、っていう方針なんですよ。なので、最初から『どうしたらいいですか?』と指示を待つんじゃなくて、『こう考えました。いいですか?』って相談するように、ずっと言われているんです。

もちろん、入ったばかりの職員だと、最初から自分の意見を言えないこともあります。その場合は、まずは色んな人の意見を聞くだけでもいい。

でも、次第に自分の意見が固まってくると、『ああやったらどうだろう』と想像力が膨らむようになるんです。そうなったとき、アイデアを提案しやすい環境にしていくのも、園として大事なことかなと思います」

保育士にも求められる「主体性」

<前編はここまで。後編では、そうした主体性を求める一方で、他の部分での「負担」が保育士や保護者にかかり過ぎないよう、ひかり保育園の現場で実践されていることを教えてもらいます。>

(取材・執筆/佐々木将史)

おむつの管理が楽になる手ぶら登園

手ぶら登園

おむつのサブスク手ぶら登園( https://tebura-touen.com/facility )とは、保護者も保育士も嬉しいおむつの定額サービスです。手ぶら登園は、2020年日本サブスクリプションビジネス大賞を受賞し、今では導入施設数が1,000施設(2021年6月時点)を突破しています。

保育園に直接おむつが届くため、保護者はおむつを持ってくる必要がなくなり、保育士は園児ごとにおむつ管理をする必要がなくなります。

>>手ぶら登園資料ダウンロードはこちら

手ぶら登園公式LINE