手ぶら登園保育コラム

保育園の運営に役立つ情報を発信

いま見直される「保育」の価値( #保育士さんありがとう )

新型コロナウイルス感染症の広がりを受けて、保育施設の運営に大きな影響が出てきています。

誰も経験のない事態に加え、各園が置かれる地域の状況もまちまち。行政から保護者まで、多くの人が難しい判断を迫られていますが、特に「現場で働く保育者」には、負担が重くのしかかっています。

一方で、感染リスクのある保育現場への理解を求める声や、そこで働く保育者を応援する声も、SNSの「#保育士さんありがとう」などで広がり始めています。

こうしたなかで、保育者は今の状況をどう理解しておけばいいのか。目の前の子どもたち一人ひとりにどう向き合って、自分自身のケアをどのように考えればいいのか。

保育の現場経験を持ち、現在は次世代の保育者の育成に携わっている大阪教育大学・教育学部准教授の小崎恭弘先生にお話を伺いました。

「社会を支える仕事」としての保育

『緊急事態宣言』のもと、保育施設はいま、自治体の方針に従って「園児の登園を控えるようお願い」したり、「医療従事者や、社会の機能を維持するために就業の継続が必要な方、ひとり親家庭などで仕事を休むことが困難な方の子どもに保育を提供」したり、リスクと向き合いながら運営を続けられています(参考:『緊急事態宣言後の保育所等の対応について』)。小崎先生は、各園の状況をどう捉えていらっしゃいますか?

小崎地域ごと、法人ごとに置かれた状況がかなり違うなかで、とても難しい判断が迫られていると思います。

そもそも保育施設には、幼稚園や小中学校における『学校保健安全法』のような法律がなく、「法的根拠を持って閉める」ことが実はできません。

今回の『緊急事態宣言』によって、初めて自治体の要請に従って閉められるようになったのですが、求められる「社会的な責任」と「感染拡大を防ぐこと」の間で、どうバランスを取ればいいのか、それぞれの園が非常に悩んでおられます。

大阪教育大学・教育学部准教授 小崎恭弘先生(オンライン上で取材をさせていただきました)大阪教育大学・教育学部准教授 小崎恭弘先生(オンライン上で取材をさせていただきました)

感染の最前線に立つ医療者などの子どもたちを預かる意味で、保育施設が「社会の重要な役割」を果たしていることが、改めて浮き彫りになったように感じます。

小崎そこも難しい点です。『児童福祉法』では、保育施設は「子どもの最善の利益のためにある」とされるので、親の職業によって保育をする子どもの選別をしてしまうことは、決して本意ではないんです。

ただ、まさに保育の仕事が「社会を守る重要なインフラ」となっている以上、無理をして現場が崩壊すれば、全てが成り立たなくなる。園としては当然「自らの職員を守る義務」もあって、より厳しい判断をせざるを得なくなっています。

現場で働く保育士さんにも、大きな負担がかかっています。

小崎今回のような緊急事態をどうするかは、制度設計としての議論があまり進んでいない領域でした。近年の大型台風の問題などで、ようやく見直され始めていたところです。

システムが整っていなかった分、対応の遅れや矛盾などが起こって、現場の保育者に大きなしわ寄せがいってしまっているのだと感じます。

ストレスをちゃんと自覚して、周囲と助け合う

SNSでも、保育士さんたちの苦悩が投稿されています。一方で、子どもを支えてくれる方々を応援する声も増えていて、『#保育士さんありがとう』などのタグをつけて感謝を示す動きも現れています。

小崎まずは、今も保育の現場に立ち続けている方々に、心からの感謝をお伝えしたいと思います。本当に頭が下がる思いです。

私自身、周囲の先生たちが疲れている様子がFacebookなどで伝わってきますし、教え子たちから「しんどいです」などの相談もきます。また、保育者にはすごく“頑張りやさん”が多いので、自分の大変さを「自覚しないまま働いている」ケースも、かなりあるのではないかと感じています。

そうしたストレスへの向き合い方として、何かすぐにできることはあるのでしょうか?

小崎無理をせず……というのはこの状況で非常に難しいかもしれませんが、それでも「自分のストレスの状態」をきちんと自覚することは大切です。

ストレスに気づければ、ときに弱音を吐いたり、周囲と支え合ったりすることもできますから。

医療現場でも言われるように、保育士さんが「自分を守ること」が、園や子どもたちを守ることになる。

小崎連携して休みを取ったり、周囲と細かなことをきちんと確認し合ったりすることも、当たり前のようで、すごく重要だと思います。

実はこうしたときこそ、保育者が「普段と変わらない行動を続ける」ことは、子どもたちに向き合う点でも、とても大切なんです。

なぜなら、非常時に保育者に求められる大きな役割の一つが、「子どもたちの不安」をきちんと受け止めてあげることだからです。

非常時こそ「丁寧な、ゆったりした関わり」を

「子どもたちの不安」という言葉が出ましたが、このような事態では、子どもにどのような変化が起きるのでしょうか?

小崎今回だけではなく、阪神淡路大震災、9.11のテロ、東日本大震災……社会に不安が広がったとき、子どもは周囲の大人たちの不安を、すごく敏感に察知します。

ただ、子どもたちは自分の不安やしんどさを上手に言葉で表現できません。そのため、何らかの身体症状……例えば「まばたきのチックが増える」「寝つきが悪くなる」「急にお昼寝中に叫んで起きる」などの現象として現れることがあります。

また、急に泣き出したり甘えたり、あるいは指吸いなどの「退行現象」が見られることもありますね。あるいは、それをぐっと我慢して、逆に「いい子に振る舞おう」としてしまう子どももいます。

保育者として、特に気をつけたい行動はありますか?

小崎まずは、そうした「子どもたちの小さな変化」を見逃さないことです。そして、一人ひとりにできるだけ「丁寧な、ゆったりとした関わり」をしてもらえたらと思います。

不安定な行動は、子どもの「どうしていいかわからない」という気持ちの現れです。そのとき、最も身近な養育者が「大丈夫だよ」と全て受容してあげることが、子どもにとってすごく大事なんですね。

非常時こそ「丁寧な、ゆったりした関わり」を

だからこそ、先ほどの「普段と変わらない行動を続ける」ことが重要なんですね。

小崎子どもたちが見通しの持ちやすい保育を心がけ、可能な限り「いつも通り」に近い生活をさせてあげることが大切です。一人ひとりが安心できれば、クラス全体も落ち着きます。これは、日々子どもと接する保育者にしかできない仕事なんです。

厳しい状況が続くと思いますが、保育者はこれまでも日々「子どもたちの命を預かる」ことを続けてきました。その積み重ねをもとに、より丁寧に、色んなことに配慮しながら、子どもたちに向き合うことが求められるのかなと思います。

ありがとうございました。

小崎恭弘
大阪教育大学教育学部准教授。1968年兵庫県生まれ。兵庫県西宮市公立保育所で初の男性保育士として12年間、保育に携わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』をはじめ、テレビや新聞、雑誌など多方面で活躍中。年間通して全国で育児指南を披露する子育ての講演を行う。NPO法人ファザーリング・ジャパン顧問。『家族・働き方・社会を変える父親への子育て支援』『子どもの力を伸ばす!! じょうずな叱り方・ほめ方』など単著・共著多数。

取材後記—— #保育士さんありがとう

話を伺うなかで言及した『#保育士さんありがとう』は、過去に2019年5月の大津市の事故(保育園児の列に車が飛び込み、多くの死傷者を出した事故)などを受け、「保育士さんに感謝の言葉を伝えよう」とTwitterを中心に広がりを見せた投稿運動です。

新型コロナウイルス感染症の拡大が続くなかで、特にこの4月以降、同じタグをつけて保育士さんを応援したり、保育現場への理解を求めたりする声が増えてきました。

少しでも現場の保育士さんの支えになるよう、また広く社会に保育の仕事の価値が伝わる手助けになるよう、記事の最後にいくつか紹介させていただきます。ぜひSNSで検索したり、発信したりしてみてください。

(取材・執筆/佐々木将史)

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