手ぶら登園保育コラム

保育園の運営に役立つ情報を発信

「どうすればできる?」の先に。人のつながりを深める園の挑戦——『フレーベル西が丘みらい園』(2/2)

ICTを柔軟に使いながら日常の保育を振り返り、コロナ禍でも「園と保護者」を新しい形でつないでいく。

前回の記事では、子どもの主体性を大切にする『フレーベル西が丘みらい園』の保育の実践や、その保育観への理解を深めたり広げたりする取り組みをお聞きしました。ここからはさらに、「保護者同士」「職員同士」をつなぐ新しいチャレンジについても伺っていきます。

「保育のなかでは、“実体験”をきちんと保証したい」

そう話す園長の柴田直美先生、幼児クラスを担当する片平祐先生。注目が集まるデジタルやオンラインツールのあり方を、現場でどのように捉えているのでしょうか。

『保護者会議』のオンライン化で、参加の選択肢を広げる

新型コロナウイルス感染症の拡大で、「一人ひとりを大切にしていく」保育のあり方は変えないながらも、行事だけは変更を迫られたフレーベル西が丘みらい園。そのなかで見出したのは、以前から柔軟に向き合ってきたICTを、特に“オンライン化”の部分で広げ、新たな行事の形や「園と保護者」の関係づくりに生かすことでした。

コロナ禍の保育で見えた「主体性×ICT」の可能性——『フレーベル西が丘みらい園』(1/2)

「ただ中止するのではなく、できる形を模索していく」。園のこうした姿勢は、直接の保育以外にもさまざまな場面に表れていきます。その1つが『保護者会』のZoom開催でした。

柴田「保護者の方々が、私たちが考えていたよりもずっと前向きにオンライン化を受け入れてくださったように思います。実際やってみても、意見がある際は画面に向かって手を挙げてくださるなど、園内で行う保護者会とほとんど差がないように感じました」

『フレーベル西が丘みらい園』園長の柴田直美先生(Zoom取材中の様子)『フレーベル西が丘みらい園』園長の柴田直美先生(Zoom取材中の様子)

片平先生も同様の手応えとあわせて、保護者が「家から参加できる」メリットの大きさを指摘します。音声をミュートにできるので子どもと一緒に聞きやすかったり、きょうだいの赤ちゃんが泣き出しても席を立たなくてよかったり……といったことに、ICTツールならではの良さを感じたそうです。

また、保護者同士の会話や意見交換も、これまでにない広がりが見られたといいます。

片平「幼児クラスのグループではチャット機能をかなり活用しました。例えば育児に関するそれぞれの悩みを投稿してもらい、それぞれの悩みにコメントをお願いすると、さらに意見がたくさん出てくる。

これが対面だとどうしても発言しにくかったり、数人の話を聞いてしまって終わったりすることがあります。全員が参加しやすく、意見が見えやすいという意味ではすごくいいなと感じました」

『フレーベル西が丘みらい園』の片平祐先生『フレーベル西が丘みらい園』の片平祐先生

他方で、オンラインツールの習熟具合に差があり、一部の保護者がうまく入れなかったことや園の進行にトラブルがあったことは「きちんと受け止めないといけない」と話します。

片平「こちらもサポート体制を作り、保育士で手分けをして電話対応を受け付けていたんですが、それでも力不足で終わってしまった事実があります。今後どうするかはコロナの状況次第になりますが、苦手な方や直接話したいという方は園で、家から参加したいという方はZoomで……といった形で併用できるといいのかもしれません」

柴田「場合によって使い分けていく、という選択肢は十分考えられると思います。ただ、私自身も決してこのツールの機能をぜんぶ使えるわけではありませんし、得意な職員とそうでない職員の差がどうしても出てきます。今後も活用していくために、『どう使いこなすか』という勉強を園でもっとしないといけないと感じています」

コロナ禍で変化した『職員会議』『外部研修』

園としての課題はありながらも、世の中でICTが普及していったことはポジティブな変化をいくつも生んでいます。例えば、「職員同士」の連携を深める『職員会議』や『外部研修』のあり方です。

『職員会議』はこれまで、早番の先生は自分の仕事が終わった後も、参加するために園に残っていました。これをオンライン化し、自宅と職員室のPCをつないだ結果、保育士の負担を軽くすることができたそうです。

片平「さらに、昼間の時間も会議に充てられるようになりました。Google Meetを使って職員室と保育室をつなぐことで、午睡担当も“耳”での参加が可能になっています」

オンライン外部研修

オンラインによる『外部研修』が増えたことも、コロナ禍の大きな変化だといいます。片平先生が特に実感したメリットは、「足を運ばなくていいこと」。

午後の1〜2時間あれば参加できる研修なら、それに合わせて園側が体制を少し調整するだけで受講できる。先生方にとって、以前よりずっと学びの機会が得やすくなりました。

柴田「自分の興味のあることを勉強したいという意欲はとても大切なので、園では個人研修もすごく大事にしているんです。積極的に『これに参加したい』と言ってくれたらできるだけ支援しますし、私から『これオンラインだし、この時間は抜けられるからどう?』とすすめることもありますね」

『観察』と『振り返り』で子どもの物語を支える——汐見稔幸 #保育アカデミーベビージョブで取材記事を作成している『保育アカデミー』の講義も、積極的に活用していると教えていただきました

特に見逃し配信があるものは、リアルタイムでなくても受講ができ、助かっているといいます。「別々に録画を見た職員同士が、後から同じ内容について語り合える」点も、研修として大きなメリットを感じるそうです。

片平「保護者さんとも共有できるセミナーなら、興味のある方に自宅から参加してもらえます。実際に『見たよ』と声をかけていただくこともありますね。そういった機会が増えたことは、コロナ禍の大きな変化だと思います」

人と人をつなぐICT活用と、“実体験”の価値

もちろん、こうした便利なツールも決して“万能”ではありません。新しく身につけないといけない知識が要る一方、人同士の「温かいコミュニケーション」は、リアルの場に及ばないことも当然あります。

それでも柴田先生たちは前向きに取り組む姿勢を見せます。今までに紹介したさまざまなメリットに加えて、「園を通して人同士が緩やかにつながっていくこと」を大切にしたいという思いがあるからです。

柴田「私自身、親として子どもを預けるなかで、他の保護者の方々に本当にたくさん支えてもらいました。だからこそ、この園が保護者のみなさん同士のつながりの場になったらすごくいいな、という思いがあります。そんな機会を増やす一環として、ICTの活用も考えていきたいんです」

みんなのせなか

園を中心に多様な方法で「出会い」を広げていく。ここには、ICTでしかできない可能性がまだまだ眠っているはずです。

コロナ禍でZoomを使って開催したという『入園説明会』は、そんな側面をのぞかせてくれた事例の1つです。次年度の入園希望者全員が参加したこの会には、出産で里帰りをしたまま「今も遠方にいる」という方も参加してくれました。

小さい子どもを抱えて、決められた日時に園に来てもらう以外にも、新しい選択肢を用意できる。「この形なら参加できます」と言っていただけたことで、園としても気づきになったといいます。

『2021年度 入園説明会のおしらせ』より『2021年度 入園説明会のおしらせ』より

一方でそういった「広げていく」ICT活用の手前に、子どもと向き合う保育園として見失ってはいけない大切な部分があることも、柴田先生は改めて指摘します。

柴田「ICTによる事例をいくつもお話しましたが、やはり子どもの保育では“実体験”が何より重要です。コロナ禍が続くなかでも、『たくさんの体験をする』ことを子どもたちに保証してあげたいですし、チャンスがあれば積極的にいろんなことに取り組みたいと思っています。

そうした保育を基本にしたうえで、ICTを使ってみて『良さそうだ』と思える場面では、新しい活用を今後もどんどんしていけるといいなと考えています」

感情を動かしながら、保育を楽しんでいく

日々大変な状況を前にしながらも、自分たちの保育を大事にしたまま「変化」に前向きなフレーベル西が丘みらい園。

今後、保育で同じようにICTを活用しようとしている園は、どんなことに気をつければいいのでしょうか。

片平「なぜICTを使うか、一人ひとりがきちんと考えることが大事だと感じています。ただ『導入しておけばいい』ではダメで、使うことで保育士が働きやすくなって、子どもに向き合う時間、しっかりと保育を考える時間が取れるようになる……まさに“実体験”につながる面まで目を向けられるといいのかな、と。

そのためにはある程度勉強もしないといけません。さまざまなツールのなかには、特に若い先生なら自然に使えているものもあるはずです。まずは各園でどんどん話題にしてもらって、意見を交わしながら活用方法を検討してもらえるといいのかなと思います」

感情を動かしながら、保育を楽しんでいく

実は動画編集が趣味の片平先生は、保育のなかで「季節」や「地域性」を感じられるようなICTの活用にも挑戦しています。雪が降ったときには、園庭に積もる様子をコマ送りの動画で撮ったり、全国の知り合いの保育者に同時期の風景動画を送ってもらい、子どもたちと見比べてみたり。子どもの喜ぶ姿を思い浮かべながら、自分も一緒に楽しめる方法を意識していく考え方は、取材冒頭の『朝のつどい』の事例で教えてくださった「保育士自身も楽しめること」と同じといえます。

「自分の感情がしっかり入るほうが、リアルに伝わっていくと思う」と、デジタルツールにも、主体的な保育にも通じる視点を改めて教えてくれた片平先生。重ねて柴田先生も、ひとりの保育士として思う「保育の魅力」を最後にメッセージとして添えてくださいました。

柴田「保育の仕事には、決してキツい側面がないとは言えません。ICTをどれだけ活用しても、業務が圧倒的に楽になるわけではありません。

それでもやはり、生きた子どもたちとの日々には『予想もしなかったことが起こる』おもしろさがあるんです。子どもの主体性を大事にしていくと、それらが本当にたくさん見えてくるんですね。

『うわあ、おもしろい』と思える瞬間を、働く保育士がいっぱい感じられる。そんな魅力的な場面が、保育のいろんな工夫のなかでもっと増えていくといいなと私は思っています」

感情を動かしながら、保育を楽しんでいく

(取材・執筆/佐々木将史、写真提供/フレーベル西が丘みらい園)

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